憎いものと愛おしいもの

ケン・ローチ「ケス」観たんですけど。
かなり旧作ね。
イギリスの痩せっぽっちで低所得層の男の子ってほんとくすぐるわ。
諦観と不満足に固く凍えた眼が、ふと喜びを見つけて輝く瞬間が、
箱マダムのあれをコチョコチョッと。
リトルダンサー」のビリーもそんなんでした。
あれは夢叶えちゃったけど。
イギリス現実派「人生はままならない」系の映画監督っていうと、
わたしはケン・ローチより、断然マイク・リーなんですけどね。
ケン・ローチはなんか甘くて。
いや、甘いってファンタジーとかではないけど、絶対ポッターとか撮らないけど。
ケン・ローチの作品には女とかこどもを優しく見る眼差しを感じるっていうか。
マイク・リーは不細工で太った女や男が、赤ら顔でわめき散らしてるって
いう図を、動揺するようなカメラの忙しない動きや、じっくり長廻しで
額ににじんだ汗や興奮で開ききった毛穴とか撮ったりして。
冷静。酷薄ではないけど、あるがまま、感情を撮るっていうのに徹している
監督って気がする。
へたに音楽入れないし。
ゲイリー・オールドマンの監督した「ニル・バイ・マウス」もけっこう。
初監督にしては、くさい台詞とか激情とかならしてる感じが好感持てたけど、
少年が車の中でヤク打ってる時、エリック・クラプトンのメロウな曲がかかる。
あれが遺憾。
箱マダムはドグマ95に共感しているので、役者の感情表現を音楽で盛り上げる
とかもってのほかだと思ってます。

 なんか、今巷でよく流れてるピアノ曲あるな。
野暮ったいダッフルコート着た眼鏡の松尾スズキ似の男が遠い眼してるのに
被さってるな。気持ちわるいよ。その人工甘味料みたいなセンチメンタル
憎む。