しばり

雨が止んだつかの間に干した洗濯ものが乾く前にまた雨は
降り出し、隣家のベランダはからっぽなんだけど、狭いウチ
は洗濯ものを部屋干しする場所がないので、そのままベランダ
に干しておく。
1日2日と洗濯ものが雨ざらしになっているのを、帰宅途に
階下から仰ぎ見、「犯罪者のうちか?」と思う。
しばらくの間、犯罪者の家族は野次馬や報道の輩に家を取り囲
まれて、干した洗濯ものを取り込む姿を曝すわけにもいかず、
「鼻歌・取り込む」のんきな日常を過ごしてやがると思われや
しないかと怯え、ジッと息を潜めて時をすぎるのを待つ。
おなじような放置の風景。
そういう連想。
ウチのバスタオル、もう一枚も無いんですわ。
はやく乾いてほしいなァと手をあわせた。
箱マダムが祈るのはこういう時だけ。

会社で仲良しのビジンさんが、「前世ヒーリングに行きたい」
と聞き捨てならないこと言うので、とりあえず待て、と。
「前世とはなんだ?おまえのの人生一回かぎりじゃないか。
癒すもなにも、構うことないから一瞬一瞬を体当たりで行け」
と説いたら鼻で笑われた。
・・たしかにバカ一代っぽい発言かもしれない。
ビジンさんのともだちが、30台後半の男ともう4年ほど交際
してるが相手が一向に結婚を切り出さないので業を煮やし、
いよいよ別れた方がいいでしょうか、と前世ヒーリング
(あえて人称化)に相談。周りはすこしでもきれいなうちに
他の男捕まえて、と別れを勧めるので女は迷っていたらしい
のだが、前世ヒーリングは
「別れなくていい。彼とは前世で3回も結婚した深い縁があるから、
あと3年もすれば彼の気持ちが固まるので、待て」と。
女は、やっぱりねと合点がいき、別れる気持ちを吹っ切ったとさ。
くだらん! 3とか3とか、単純なでまかせでスヤスヤかよ。
ビジンさんは我が将来が不安でたまらないから、ともだちのように
前世を聞いて安心したいという。
知りたいのは未来じゃなくて、過去。
せつないじゃないか。
占いも、宗教も因果を説く。
因果に、原罪に、縛られ思うまま生きられなくなると、死。