また映画のはなしかよ

俺さまギャロ様の「ブラウンバニー」をさっそくビデオで観たんですが。
カンヌで大ブーイングを浴び、史上稀なるオナニー映画だとか、
前評判よかったもので、映画館にはさすがに行かなかったけども
(高い金払って寝たくなかったので)、
ビデオ発売は楽しみにしていたのだった。
うつくしい映画でした。カメラに映り込む光線具合でアメリカの風土感が
よく出ていたと思うし、さすが写真家でもあるギャロ様、
カットの構図いちいちが決まってる。
映画に流れるセンチメンタルは甘すぎず、薄荷飴のような味わいだし、
罪悪感が「愛」の一部だということ かけがいのない相手を失っても 
大声で叫ばずに愛し続けることはできること、痛みと哀しみの中にいても
他のうつくしい顔にときめく、という真理があった。

洗面台で顔洗わせたらギャロ様がいちばん。
バッファロー'66」でも、主人公が洗面台で顔洗い、ナーバスな顔を
鏡に写すという好シーンがあったけど、
(もう生きられないってなこと言うんだよね)
「ブラウンバニー」でも3回くらいあったかしらね。
やりきれなくなると顔洗うんだね。
酒もたばこも無しに、主人公の焦燥と孤独と緊張を顔洗いで癒すって
ヘルシーだわ。
1回本編観て、2回目はギャロ解説副音声でみたんだけど、愉快でした。
愚痴と自己賞賛と嫌悪とこだわりが秒単位で交互にやってくるの。
ウディ・アレンが映画で演じる男みたいなちょっと奇妙な神経症でね。
おかしいの。
箱マダムは映画に唾棄すべきナルシズムとか感じなかったけどなぁ。
わたしがその言葉をつかうなら、フィリップ・ガレの映画かしらね。
ひたすら退屈で眠いです。
ギャロ様は「もう映画なんか撮らない、人生を台なしにするから」って
息巻いてましたけど、ほんとかなぁ。
ジャン・ユスターシュみたいに1本の佳作を残して夭逝したら、やだなぁ。
「ママと娼婦」
ヌーベルバーグの流れの中で箱マダムがもっとも好きな映画かもしれません。