プリプリ

まったく腹がたつ。つまらない映画を立て続けに観たせいだ。
歌舞伎町の映画館で「ブラックダリア」のレイトショーを観た。
ジェームズエルロイの代表作がブライアンデパルマによって映画化、
と聞けば華麗なるフィルムノワール作品かも、とちょっと期待するし。
しかし前作の「ファムファタル」もそんな前評判で、ふたを開けたら
呆然とするほど凡作だった。
で・「ブラックダリア」、だめだった。
うりふたつだと皆口を揃えていう猟奇殺人の被害者と富豪令嬢の容姿が
まったく似ても似つかない。
共通点はブルネットと黒ずくめの衣装だけじゃん。
下品な顔がいけすかないヒラリースワンクがさらに痩せて、やたら
出歯が目立つのに、ジョシュハーネットの朴訥ナレーションが
絶世のファムファタルみたいに誉めそやすので、げんなりした。
別の美人女優が「めまい」のキムノヴァクみたいに二役すれば説得力も
あったろうに。
映像も、お得意のロングショット、カメラ廻りこんでの決めショットも、
まったく冴えない。画面の騒々しさだけが印象に残って、意図がぴんぼけ。
アクション場になると、いかにもという(インディジョーンズばりの)勇ましい
音楽が流れてシーンを煽るのだけど、俳優の機微や画面に緊張感がないので、
頭の中で消音すると、なんのシーンだかさっぱりわからない。
そのずれっぷりが面白くて笑ってしまった。
パルマ、「カリートの道」以来ちっともよくない。


もう一つの立腹映画は最近DVDになった「変態村」
ハズバンドの会社の同僚がおすすめ、と貸してくれたのだが、もう、これが
悶絶するほどおもしろくない。
醜悪だったり狂気じみたシーンを延々映すだけで、愚鈍なほどしつこい。
箱マダムはしつこいのはきらいだ。
ミヒャエルハネケってヨーロッパの監督の作風と似てるかもしれない。
あれもきらい。
露悪的、神経逆なでする感じ。心の闇や狂気や、アブノーマルな性癖を
劇的なものとして映画モチーフにする監督は下劣だ。
マナーとして上からもの見るような眼(神目線)でみてはいけない。並列で。
人間の本質はみな同じであり、それが極端な形でぶれているひとたちを嫌悪的に
描く輩は、映画作家じゃない。
こんな駄作がDVDになって、ジョンウォーターズの最新作があいかわらず日本未公開
とは納得いかぬ、と夫婦で憤慨するのだった。
変態といえば・ジョンウォーターズ。われら夫婦の愛好する、ユーモアを忘れない
にこやかな変態映画作家の『ダーティシェイム』、早く観たいわぁ。